空色徒然草

by いおいお

好きな詩人(ひと)

 嗚呼、最果タヒさいはてたひが好きだ。
 一番好きな詩人(現代詩人)は、と訊かれたら間違いなく「最果タヒ」と答えるだろうけれど、二番目は、って訊かれたら答えられない。そもそもそんなにたくさん詩人を知っているわけではないのだ。「知っている」と胸を張って言える詩人は最果タヒくらいで、その「知っている」詩人の中で一番好きなのが最果タヒ
 去年、出版直後に買った最果タヒのエッセイ集を再読しながら、やっぱこの人の言葉は強くて安心するな、と再認識した。ミュージシャンのライブなんかで、最高にグルーヴィーでエモーショナルなプレイが飛び出すと思わず「イェイ」と唸りたくなることがあると思うけれど、最果タヒの文章を読んでいるとしばしば「イェイ」と唸りたくなる瞬間がある。最果タヒの文章はグルーヴがすごい。彼女の本業は詩だし、もちろん詩のほうもすごく好きなのだけれど、たぶん彼女は散文を書くときも半分詩を書いているような気分なのだろう、って思えるくらい、言葉の選び方や文の長さなんかにこだわりが見えるし、何より表現に隙がなくがっちりしていて、(別に読んでいる人を説き伏せてやろうという強い意図があるわけではないと思うけれど)説得力に満ちている。書いている内容が何であれ、説得力のある文章を読むのは楽しい。
 いまは東京で活動されているみたいだけれど、生まれは兵庫だそうで、同じ関西人としてなんとなく親近感が湧いてくる。この人は小説も出しているのだけれど、この人の書く小説にはちょくちょく関西訛りの人物が登場したりする(作者本人にその意図はないのだろうけれど、たぶんつい出てしまうのだろう)。ちなみに、小説家カテゴリでいま僕が一番気に入っているのが松田青子という人なのだけれど、この人もどうやら兵庫生まれで、なんで僕は兵庫生まれじゃないんだろう、なんてつい思ってしまう今日この頃である。
 最果タヒの詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化されて近日公開されるそうで、普段はあまり映画とか見ないのだけれど、タヒファンとしてはチェックしておいた方がいいのかな、なんてそわそわしながら三月ももう残りわずか。皆さん、最近の推しの詩人は誰ですか。小説家でもいいです。今年も素敵な作家さんにいっぱい出会えたらいいな。

夜空はいつでも最高密度の青色だ

夜空はいつでも最高密度の青色だ