その左手で掴んだもの
ふらっと図書館に行って、ぱっと目に入った『君はレフティ』というタイトルについ手が伸びた。「レフティ」と聞くと、ベーシストか何かだろうか、とつい思ってしまうのが音楽をやっている者の性である。「君はレフティ」とのたまっているのは女のほうで、つまりこれはある女とベーシストの男の恋愛物語か何かなのかもしれない、とタイトルだけでまず空想を広げる。どこかの国のとある民族に、彼氏がバンドマンであることは若い女性にとってステータスである、という文化があると聞いたことがある。もしかしたらそういう、バンドマンを彼氏にすることを生きがいにしている健気な女の子とそんな女の子を何人も相手にしながら人生の虚しさを知る男の子(左利き)の、愛と絆と性と絶望の物語なのかもしれない、もしそうだとしたら、ちょっと面白そうかも、と勝手に決めつけて、滞りなく貸出手続きを済ませる。
まあ、わかってはいたけれど、全然違った。
主人公の男の子・
見ての通り、バンドマンの彼女とかそういう下衆っぽい話(失礼)とはとんと関係がない。音楽の要素からして皆無である。恋愛モノであることは確かだけれど、もう少し複雑な事情を孕んでいて、考えさせられるテーマを含んでいる。
著者の