空色徒然草

by いおいお

ブログ引っ越しのお知らせ

大同巌のブログは以下URLにお引越しします。 iwaoletter.hatenablog.com こちらのブログ(『空色徒然草』)は、一応残しては置きますが、記事の更新等は今後はしない予定です。新しい方をブックマーク等していただけると幸いです。

僕の最近と本の話

中身の出来がどうであろうと、新しい刊が出たら買う。そういうフアンが大事なんだって、村上春樹も言ってた(『職業としての小説家』、スイッチ・パブリッシング)。 九月の締めくくりに、最果タヒの新刊を買う(『天国と、とてつもない暇』、小学館)。前に…

『わたしを離さないで』

映画の方を先に観たので、多少は予備知識があったわけだけれど、それでも実に読みごたえのある良い小説だった。序盤は特に時系列を 把握するのに頭をつかうけれど、それで話がわかりにくくなるというほどではなく、独特の雰囲気のある小説だなという印象を強…

四月の先端で

四月だから、川上未映子の詩を読んだ。「四月ってさ、詩が語られるべき月っていう感じがするんですよね」と言っていたのは川上自身である、文句はあるまい。 川上未映子を読んだのはこれが初めてであった。川上未映子の名前は前から知っていたが、帯とか裏表…

四の五の言わずに小説を

日本語表現の専門家を名乗るある方が、自身のTwitterで「ファミレスなんかで「ドリンクバーはよろしいですか?」「結構です」「失礼しました」という会話を目にするが、この「失礼しました」の用法はちとよろしくない、なぜならそれが浸透してゆけば「尋ねた…

愛の理想声帯

「体のために生きる、部屋のために掃除をする、世界のために、きみに恋する。」(『愛の縫い目はここ』「アンチ・アンチバレンタインデー」より) 最果タヒの詩は、若い女性の東京語話者が読むのが最適だと勝手に思っているのだけれど、やっぱり自分でも声に…

YouTuberと故郷

先日、電脳少女シロというYouTuberのゲーム実況プレイ動画をニコニコ動画で観ていたのだが(公式アカウント「電脳少女シロ」の投稿動画である)、PUGB(世界中のプレイヤーがオンラインで集まって銃を撃ちあい、最後に生き残ったものが勝者としてカツ丼(ド…

アートと金魚

二条城のアートアクアリウム会場にて、形大きさ様々な水槽に入れられ、色とりどりの光に照らされながら無表情で泳ぎ回っている無数の金魚を見ながら、もし、観賞用に品種改良された何万という人間をガラス箱に閉じ込め、光を当てたりBGMを流したりして演出し…

金原瑞人週間〜3冊目〜

前に読んだのが似非異世界ファンタジーだったとすれば、今回のは本物の異世界ファンタジーだった。正確に言うと、SFだった。 人が歳を取らない世界。老化防止薬とかいうものが開発されて人々は歳を取らなくなり、死ぬのが遅くなった。その代わり、子どもを産…

金原瑞人週間〜2冊目〜

近頃日本の若い読者層の間では異世界ファンタジーなるジャンルが大いに流行っているみたいだけれど、僕にとってこの小説は、ほとんど「異世界」の物語に思えた。異世界というか、かつて触れたことのない異文化だった。カルチャーショックというのだろうか、…

金原瑞人週間〜1冊目〜

最初はわからなかったが、「ウィルスン」の登場シーンあたりで「あ、これ読んだことあるやつだ」と気が付いた。国語の教科書か何かで抜粋で読んだのかな、とも思ったけれど、ウィルスン氏登場シーンも最後のシーンも何となく覚えているということは、少なく…

死ぬ前に

自分は、わりあい早くに死ぬのではないだろうか、という妄想が時折脳裏をよぎる。別に早く死んだって構わないのだけれど、それなら生きているうちに何かもうちょっと功を成したい、と欲が出る。 功を成すってそもそも何なんだ、とも思う。好きな人に、「あな…

曲にタイトル、飼い猫にガンダム

歌詞の無いインスト曲にどんなタイトルを付けるか、ということが、ミュージシャン達の間でしばしば話題になる。歌詞という明晰なメッセージ性を欠いているからこそ、敢えて何らかの名前をその曲に与えるという行為がゆかしく思われるのである。 ゆかしいなど…

嘘も大概

僕はどちらかというと性善説支持者なので、「近頃ネットで出回っている誰々が書いた記事は嘘八百だ」などという警告記事の類いを見ると、本当にその誰々は「嘘」を書いたのだろうか、という気持ちになる。嘘を書いて人を欺くつもりはなかった、ただ、自分が…

「痴漢は犯罪」とかいう前に

痴漢行為は大抵の場合悪(guilty)だけれど、中には「痴漢されても動じない」「むしろ痴漢をされて喜ぶ(いわゆるOK娘などと呼ばれる)」タイプの女性が存在する(つまり痴漢が悪でない場合もある)、などということが一部の痴漢ならびに痴漢予備軍によって…

詩人を語る人たち

川端康成の小説をたいそう気に入っている友人がいて、彼曰く康成の書く一文一文は自分にとってあまりにも重い(もしくは鋭い、だったかもしれない)から、一度にたくさんは読めないのだ、と。同じことが僕にとっての最果[さいはて]タヒにも言える。『ユリ…

BUSHIDO!

新渡戸稲造の名著『武士道』の序文に次のようなくだりがある。 「あなたのお国の学校には宗教教育はない、とおっしゃるのですか」と、この尊敬すべき教授(ベルギーの法学大家故ド・ラヴレー氏)が質問した。「ありません」と私が答えるや否や、彼は打ち驚い…

書かれて終わり

過去に書いたことというのは、案外覚えていないものである。「話す=離す」だとか言って愚痴の効用を説いていた心理学者がいたけれど、それと同じで「書い」てしまうことによって自分の中のものを吐き出してしまっているから、その書いたものをもう一度読ま…

思い出すことなど

月は輝き、紫陽花は咲いた。次は、何を待とうかしら。 待つということも素敵だけれど、過ぎ去ったことを思い出すという行為も、人生というストーリー(インスタ的な)にきらきらしたエフェクトを加える重要な要素だな、ということをなんとなく考えていたこと…

その左手で掴んだもの

ふらっと図書館に行って、ぱっと目に入った『君はレフティ』というタイトルについ手が伸びた。「レフティ」と聞くと、ベーシストか何かだろうか、とつい思ってしまうのが音楽をやっている者の性である。「君はレフティ」とのたまっているのは女のほうで、つ…

あじさいの手紙

国道沿いを自転車で走っていると、道のわきに時折植えてある紫陽花の葉が、来るべき季節への期待に、てかてかしているのが見える。紫陽花の葉がてかてかしているのを見ると、無性にわくわくする。冬の終りに、桜の新芽が膨らんでいるのを見るときの、あのわ…

伏線回収人生

保坂和志の『書きあぐねている人のための小説入門』を久しぶりに再読した。 まるで僕が小説家を目指している人であるかのように思われるかもしれないけれど(たしかに小説家/文筆家という生き方への憧れはないではないけれど)、単純に、この人の小説論は読…

それはいじめか

たまたま、家族の誰かが図書館で借りてきた『聲の形』単行本の第一巻がリビングに置きっぱなしになっていたのでそれを読んで、たまたま、時間つぶしに入った書店で最果タヒの新刊『10代に共感する奴はみんな嘘つき』が出ていたので(発売日の前日だったけれ…

ロマンティック・歩きスマホ

かわいい子とすれ違ったり、青空が見え始めたり。スマホを見ながらの、たった数歩の間に、目の前のステキな出来事を見逃しているかもしれない。 ——という文言で始まる広告がJRの車内に貼ってあって、これは要するに「歩きスマホはやめようね!」というメッセ…

イースター?

たまに誤解されているようだけれど、イエスが墓からよみがえったのは十字架で死んだ三日後・・・ではなく、死んで三日目・・・である。十字架の上で息を引き取ったのが金曜日の午後三時頃、その後ある議員(隠れてイエスを慕っていた)に引き取られて墓に葬…

人生の背景色

ヘッドホンを外すと、窓の外に雨の音が聞こえた。 いつから降っていたのだろう、ちっとも気が付かなかった。 ヘッドホンの内側の音世界というものは、外側の音世界に対してどうもいささか閉鎖的で、無関心すぎるところがある。(もちろんそれがヘッドホンの…

趣味はブログ。

新年度一日目の仕事は、同い年の友人の結婚披露宴だった。 新郎新婦は友人とその夫だし、参加者はほぼ身内だし、スマートカジュアルだし、ボランティアだし、仕事というほどのものではないのだけれど、頼まれてピアノを弾くとなると、相手が誰であれ「わかり…

好きな詩人(ひと)

嗚呼、最果タヒ(さいはてたひ)が好きだ。 一番好きな詩人(現代詩人)は、と訊かれたら間違いなく「最果タヒ」と答えるだろうけれど、二番目は、って訊かれたら答えられない。そもそもそんなにたくさん詩人を知っているわけではないのだ。「知っている」と…

うぐひすの歌

窓の外で鶯が鳴いたので、久しぶりに書棚から歳時記を取り出してぱらぱらと眺めてみる。俳句の世界では鶯のことを「初音(はつね)」ともいうらしい。初耳であった。 おのづから聞ゆるものに初音かな/長谷川櫂 鶯にせよ、桜にせよ、春はとにかく詩欲をかき…

東京行きたいな。

標準語(というか東京語?)において、「東京行きたいな」という文は文法的に正しいのだろうか。 文章を書く時は基本、標準語をベースに書いているのだけれど、実際のところ自分は標準語のネイティブスピーカーではないから、ちょっと逸脱しているかもしれな…