空色徒然草

by いおいお

ロマンティック・歩きスマホ

かわいい子と
すれ違ったり、
青空が見え始めたり。
スマホを見ながらの、
たった数歩の間に、
目の前のステキな出来事を
見逃しているかもしれない。


——という文言で始まる広告がJRの車内に貼ってあって、これは要するに「歩きスマホはやめようね!」というメッセージの一環なのだけれど、かわいい子とすれ違ったり青空を見上げたりすることは人生に潤いと深みを与える非常に重要な要素だと信じている僕のような人間にとってこの広告は効果覿面だった。
 広い意味では、通りすがりの女の子に目を奪われるのも空を見上げるのも注意散漫には違いないし、前を見て歩けよという話なのだけれど、それでもスマホの画面を凝視しながら線路に転落するのに比べれば、通りすがりの綺麗な女の子に気を取られながら通りすがりのヤクザにタックルしたり青く高く澄んだ空を仰ぎながら4tトラックに跳ね飛ばされるほうがよっぽどロマンティックである。
 そんなことを考えながら、あ、これブログのネタに使えるかな、と思ってスマホのメモ帳に書き込んでいると、気が付いたら降りる駅だった。慌てて降りて、でもまだメモが中途半端だからやむを得ず歩きながらメモを書き切る。結局、堂々と歩きスマホをしているのである。さっきすれ違ったかもしれないかわいい女の子は僕を見て何を思っただろうな。もしかしたらその子も歩きスマホをしていて、僕に気が付かなかったかもしれないけれど。歩きスマホをしていてお互いに気が付かない二人、これもこれで、小説的でゆかしい。

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