空色徒然草

by いおいお

死ぬ前に

 自分は、わりあい早くに死ぬのではないだろうか、という妄想が時折脳裏をよぎる。別に早く死んだって構わないのだけれど、それなら生きているうちに何かもうちょっと功を成したい、と欲が出る。
 功を成すってそもそも何なんだ、とも思う。好きな人に、「あなたのことが好きな人がここに一人いますよ」と伝えられるだけでも、大した功かもしれない。というか、個人的に、それ以上尊い存在価値はちょっと思い付かない。ということは、より大きな功を成そうと思うなら、より多くの人に「あなたのことが好きですよ」と伝えることを目指せばよいのだろうか。
 よりたくさんの女と付き合いたいという意味ではないし、女のみならず男とも交際をしなければならないという意味でもない。「あなたと性的関係を結びたいわけではない(結婚相手以外)が、あなたのことを自分のことのように大切に思っているし、幸せになってほしいと心から願っている」という思いである。これは潔白で健全なものだと僕は思っている。もっとも、これを相手に伝えるという段になると、仕方にしてもタイミングにしても、相当難しいのだけれど。
 ここまでくると、「死ぬ前にせめて結婚して子をなしたい」という願望が正当化されてくるように思う。子をなすことが功を成すこと、という意味ではもちろんない。愛したいから産みたいのである。そういう願望は結構以前から持っていたような気がする。もっとも、子どもを作ったことなんてないから、実際できてみるとどんな感情を持つかわからないけれど。
 あと十年くらいはせめて生きたい。